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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
感染症診断における遺伝子解析技術の適応 |
論文言語 |
J |
著者名 |
大楠 清文, 江崎 孝行 |
所属 |
岐阜大学大学院医学系研究科 病原体制御学分野 |
発行 |
臨床微生物:18(3),163─176,2008 |
受付 |
平成20年6月6日 |
受理 |
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要旨 |
近年,遺伝子解析技術は,分離菌株の迅速な菌種の同定のみならず,検体から直接,微量な病原体を検出・同定する際に追加の検査として利用されている。核酸増幅法の最大の利点は,ヒトに感染症を起こすほとんどすべての細菌,真菌,原虫,ウイルスを迅速かつ高感度に検出できることである。抗菌薬投与後あるいは投与中の細菌感染症,とりわけ髄膜炎や心内膜炎では,培養法で原因菌を検出できない場合においても病因診断が可能である。さらに,培養が困難な病原体,培養に長い時間を要する細菌の検出にも威力を発揮する。日常検査では鏡検で細菌が観察されたにもかかわらず,培養で生えてこない場合がある。このようなケースでは検体から直接broad-range PCR法で細菌のDNAを増幅後,産物をシークエンス解析することで菌種名を決定できるだけでなく,その細菌を分離するための培地の追加,温度やガス環境などの培養条件の変更,培養期間を延長することが可能となり,生菌を得ることにも寄与する。筆者らは,以上のような利点を有する遺伝子解析技術を実際に用いて,全国の病院において日常検査法で診断できなかった260症例以上の臨床検体を精査してきた。本稿では,「どのような状況で遺伝子検査を活用するのか?」を把握・認識してもらうべく,解析した代表的な症例の病態や診断名と原因微生物,病因診断までのプロセスを紹介する。遺伝子解析技術を用いた感染症の診断においても,臨床医との緊密なコミュニケーションにより得られた情報を熟慮しながら解析にあたることが必須であることを強調したい。 |
Keywords |
molecular diagnostics, conventional PCR, broad-range PCR, sequencing, 16S rRNA |
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