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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Helicobacter属菌種迅速検出のための各種市販培地の性能評価
論文言語 J
著者名 富田 純子, 菓子田 充明, 笈西 一樹, 遠藤 隆一, 森田 雄二, 河村 好章
所属 愛知学院大学薬学部微生物学講座
発行 臨床微生物:18(4),227─235,2008
受付 平成20年4月21日
受理 平成20年8月1日
要旨  Helicobacter属菌種を対象とした培地の性能評価はこれまで主にHelicobacter pyloriにより行われてきたが,近年,Helicobacter cinaediの検出報告が散見されることから,H. cinaediを含む多数のHelicobacter属菌種を使い,各種市販培地の性能評価を行った。Helicobacter属15菌種基準株とH. cinaedi臨床分離株14株を用いて,日水製薬の羊血液寒天培地,ヘリコバクター寒天培地,変法スキロー培地,変法スキローEX培地,栄研化学のHP分離培地,Viヘリコ寒天培地,極東製薬のピロリ寒天培地,およびベクトンディッキンソンのコロンビアHP寒天培地の8種を比較した。8種の培地のうち,ヘリコバクター寒天培地,Viヘリコ寒天培地,ピロリ寒天培地は,血清含有培地であり,さらに還元系色素が添加されているため,半透明な培地に紫色のコロニーを形成し,血液寒天培地よりも目視により迅速に菌の発育が確認できた。この3種の培地の中ではヘリコバクター寒天培地での発育が一番良好であった。発育菌の活性を評価する目的で行ったATP活性測定では,羊血液寒天培地および変法スキロー培地上に発育した菌体の活性測定値が培養5日目に急激に低下するのに対し,ヘリコバクター寒天培地上の菌体のATP活性は維持されていることが明らかになった。さらに細胞の形態観察を行うと,羊血液寒天培地および変法スキロー培地上の菌体の多くが培養5日目には球菌形に変化しているのに対し,ヘリコバクター寒天培地上の菌体は螺旋形態が保持されていた。以上の結果から,ヘリコバクター寒天培地は迅速検出,発育支持力の両面において優れていると考えられた。
Keywords Helicobacter cinaedi, 選択培地, 迅速検出
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