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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Solobacterium moorei敗血症の1例:本邦初の報告症例と菌株の特徴について
論文言語 J
著者名 森 早苗1), 渡 智久1), 安田 篤志1), 三浦 佐知子1), 尾栢 隆1), 畑中 宗博1), 大楠 清文2)
所属 1)北見赤十字病院 検査部
2)岐阜大学大学院医学研究科病原体制御学分野
発行 臨床微生物:18(4),236─244,2008
受付 平成20年6月23日
受理 平成20年8月18日
要旨  偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるSolobacterium mooreiによる敗血症を起こした国内初の症例を報告する。患者は喉頭癌の末期状態で頚部皮下組織に転移性腫瘍を認めていた60歳男性である。40℃の発熱と倦怠感を主訴に当院救急外来を受診し,耳鼻咽喉科に入院となった。入院時に施行された血液培養検査で培養2日後の嫌気ボトルより,多形性を示すグラム陽性桿菌とPrevotella melaninogenicaが分離された。グラム陽性桿菌は,同定キットRapID ANAII,API 20AでともにEggerthella lentaと判定された。しかし,分離菌株はカタラーゼテスト陰性,硝酸塩還元試験も陰性とE. lenta本来の生化学性状とは異なっていたため本菌種名として報告することを躊躇した。そこで16S rRNA遺伝子の塩基配列決定した結果,Solobacterium moorei基準株と99.6%の相同性であったことから本菌種と同定された。市販されている同定キットのデータベースにS. mooreiは登録・収載されていないため,検査室でこの菌種を同定することは困難である。しかしながら,誤同定される可能性があるE. lentaとは前述の二つの反応が異なるほかに,α-glucosidaseがE. lentaは陰性である一方,S. mooreiは陽性あることが両者を鑑別するうえで重要であることを明らかにした。日常検査において,今後も患者背景を十分に考慮しながら,菌の形態,同定キットの反応性などを注意深く観察して,より正確な同定結果を提供していきたい。
Keywords Solobacterium moorei, 敗血症, 多形性, 16S rRNA, Eggerthella lenta
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