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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 有意義な血液培養を行うために試みた2セット採血法の動向調査
論文言語 J
著者名 谷道 由美子1), 矢越 美智子1), 矢内 充2), 上原 由紀3), 細川 直登4), 下口 和雄1), 山田 ヒロ子1), 大底 睦子1), 山本 幸代1), 熊坂 一成1), 2)
所属 1)日本大学板橋病院臨床検査部
2)日本大学医学部臨床検査医学系
3)順天堂大学医学部 感染制御科学/総合診療科
4)亀田総合病院臨床検査科総合診療感染症科
発行 臨床微生物:18(4),245─251,2008
受付 平成20年3月24日
受理 平成20年8月18日
要旨  筆者らは血液培養の培養陽性率を向上させるため,2001年から異なる2カ所の部位からの採血法(2セット採血)の実施を推奨してきた。その結果,2004年には2セット採血の実施率が59.0%になった。2002年1月から2004年12月までの3年間のデータを調査した結果,菌陽性率は2セット採血22.1%,1セット採血14.0%となった。検出された菌群のうち,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌群(CNS),腸内細菌科グラム陰性桿菌群(腸内細菌群),Bacillus属,およびブドウ非発酵グラム陰性桿菌群(非発酵菌群)において培養陽性率に有意差が認められた(χ2検定,p<0.01)。菌検出時,起因菌の可能性が極めて高い腸内細菌群,非発酵菌群,黄色ブドウ球菌では2カ所の採血部位のうち1カ所のみから検出された症例が,それぞれ31.3%,41.9%,21.4%に認められた。この結果は,1セット採血ではこれらの菌を検出できない可能性があり,2セット採血を実施することが明らかに起因菌の陽性率向上につながることを示した。一方,検出菌の80%が採血時の汚染であるといわれているCNSについては,2カ所の採血部位のうち1カ所のみから検出された症例が74.3%に認められ,汚染菌の可能性が高いと考えられた。採血時に汚染菌として混入する可能性が高い菌群は2セット採血を実施することでさらに汚染率を上げる結果にはなるが,起因菌としての判断はボトルの陽性本数に依存するといわれているように,陽性となったボトルの本数が起因菌か汚染菌かの判断の手助けとなると考えられた。
Keywords cultivation of blood, two-sets blood culture, detection rate of germ
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