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日本臨床微生物学会雑誌

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論文名 急性中耳炎例の中耳貯留液から分離された肺炎球菌の莢膜型と薬剤耐性遺伝子解析
論文言語 J
著者名 黒川 いく1), 真崎 純子1), 千葉 菜穂子2), 生方 公子2)
所属 1)労働者健康福祉機構 東北労災病院 検査科
2)北里大学北里生命科学研究所 病原微生物分子疫学研究室
発行 臨床微生物:19(1),5─11,2009
受付 平成20年8月12日
受理 平成20年12月24日
要旨  2006年8月から2007年5月までに東北労災病院耳鼻咽喉科を受診し,急性中耳炎(AOM)と診断され,鼓膜切開術が施行されて採取された中耳貯留液462検体を対象とした。190株(41.1%)の菌が分離され,このうち75株(39.5%)がStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と同定された。75株について,薬剤耐性化にかかわる遺伝子解析を実施した。pbp1apbp2xpbp2bの3遺伝子に変異をもたないgenotype(g)PSSP(gPSSP)は6株(8.0%),pbp2xpbp2bpbp2x2b,あるいはpbp1a2x変異のgPISPが36株(48.0%),3遺伝子に変異を認めるgPRSPは33株(44.0%)であった。マクロライド耐性遺伝子は,erm(B)保有が46株(61.3%),mef(A)保有が23株(30.7%),耐性遺伝子を保有しない株はわずか3株(4.0%)のみであった。莢膜血清型は,3(25.3%)>19F(18.7%)>6A(16.0%)>14(9.3%)=23F(9.3%)の順で多かった。これらの菌株のうち,ムコイドの性状を示す3型(pbp2x変異株)と極小コロニーを呈する14型菌(pbp1a2x変異株)におけるpenicillin G感受性は,日常業務の微量液体希釈法ではいずれも≤0.06 μg/ml以下と判定されていた。感受性測定時における接種菌量や培地の再検討が必要であると結論された。
Keywords Streptococcus pneumoniae, serotype, penicillin-binding protein genes, acute otitis media
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