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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
肺アスペルギルス症の病態と呼吸器検体より分離されるAspergillus属の臨床的意義 |
論文言語 |
J |
著者名 |
田代 隆良 |
所属 |
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 |
発行 |
臨床微生物:19(2),67─75,2009 |
受付 |
平成21年4月17日 |
受理 |
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要旨 |
近年,呼吸器内科領域では慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)と診断される症例が増加し,呼吸器検体からのAspergillus属分離件数も増加している。Binderらが報告したCNPAは軽度の免疫抑制宿主に発症する局所侵襲性肺アスペルギルス症であるが,わが国では抗真菌薬投与が必要な慢性肺アスペルギルス症をCNPAと定義している。長崎大学第二内科で1998年4月から2009年2月までの間に139例から165株のAspergillus属が分離された。菌種はA. fumigatus 67株(40.6%),A. niger 53株(32.1%),A. versicolor 20株(12.1%),A. terreus 10株(6.1%),A. flavus 9株(5.5%),A. nidulans 3株(1.8%),A. sydowii 2株(1.2%),未同定 1株(0.6%)である。1998~2004年と2005~2009年を比べると,A. fumigatusは58.2→28.6%と減少し,A. nigerは20.9→39.8%,A. terreusは4.5→7.1%とnon-fumigatus Aspergillus属が増加した。Aspergillus属分離139例中,肺アスペルギルス症は77例(55.4%)で,CNPA 37例(26.6%),アスペルギローマ22例(15.8%),侵襲性肺アスペルギルス症10例(7.2%),アレルギー性気管支肺アスペルギルス症8例(5.8%)であり,定着は62例(44.6%)だった。呼吸器検体からAspergillus属が分離された場合,菌種の病原性と宿主の免疫状態を考慮した総合判断が必要である。 |
Keywords |
Aspergillus fumigatus, non-fumigatus Aspergillus species, pulmonary aspergillosis, chronic necrotizing pulmonary aspergillosis |
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