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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
外来診療を目的としたReal-Time PCR法によるMycoplasma pneumoniae肺炎迅速診断のための検査体系の構築 |
論文言語 |
J |
著者名 |
中村 彰宏, 阿部 教行, 河野 久, 藤本 宜子, 福田 砂織, 畑中 徳子, 松尾 収二 |
所属 |
天理よろづ相談所病院臨床病理部 |
発行 |
臨床微生物:19(3),148─156,2009 |
受付 |
平成20年12月26日 |
受理 |
平成21年5月11日 |
要旨 |
外来患者において市中肺炎起炎菌のうち約10~30%は非定型肺炎病原体が占めている。しかし,現在Mycoplasma pneumoniaeなどの非定型病原体は通常の病院検査室で行っている検査では迅速検出が困難である。われわれは外来診療における迅速検査としてreal-time PCR法を用いたM. pneumoniae迅速検出方法を確立した。検査系確立にあたり,以下の3点について検討を行った。
まず第一に,蛍光検出フォーマットとしてSYBR Green Iを用い,Light Cycler 2.0 system(Roche)を使用し,PCR検査総所要時間を検体提出より45分の系を組んだ。本PCR検査に用いたprimerはM. pneumoniae 16S rRNA遺伝子上をターゲットとし,感度は3.09 fg/μlまで検出可能であった。これはコピー数に換算すると約102~103コピーに相当し,菌量の多い急性期M. pneumoniae肺炎症例には十分対応可能であると思われた。
次に,通常遺伝子検査で行われる特殊なDNA抽出操作の省略を試みた。最終診断としてM. pneumoniae肺炎と診断された15症例においてDNA抽出操作の有無でcrossing point valuesの比較を行ったが,DNA抽出操作を行わない本検査の前処理検体においてもほぼ良好な感度が得られた。
最後に,PCR阻害物質について検討した。抗菌薬混入による影響はみられなかったが,血液混入により明らかな感度低下を認めた。
今後,従来からの塗抹検査,分離培養検査および血清学的検査に加え本法のような迅速検出可能な遺伝子検査を導入することで早期診断に寄与できるものと考える。 |
Keywords |
real-time PCR, Mycoplasma pneumoniae, 16S rRNA gene |
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