学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 糞便中のESBL産生腸内細菌スクリーニングの有用性
論文言語 J
著者名 中村 竜也, 清水 千裕, 乾 佐知子, 佐野 一, 奥田 和之, 中田 千代, 藤本 弘子, 大倉 ひろ枝, 植村 芳子, 高橋 伯夫
所属 関西医科大学附属枚方病院 臨床検査部
発行 臨床微生物:19(4),230─235,2009
受付 平成21年7月10日
受理 平成21年10月7日
要旨  近年,薬剤耐性菌の蔓延は院内感染だけでなく,市中感染としても問題視されている。Extended-spectrum β-lactamase(ESBL)を産生する腸内細菌もその一つであり,定着菌としての動向を把握することは治療上で重要である。そこで,われわれはchromIDTM ESBLを使用し,糞便中のESBL産生腸内細菌の検出を試みた。検討に用いた糞便332検体中,chromIDTM ESBLに発育した腸内細菌は88検体97株(29.2%)であった。そのうち,確認試験およびPCR法にてESBL産生菌と同定されたのは,30株(9.0%)であった。ESBL産生菌の内訳は,Escherichia coli 18株(5.4%),次いでEnterobacter cloacae 8株(2.4%),Klebsiella pneumoniae 1株(0.3%),Proteus mirabilis 1株(0.3%),Citrobacter freundii 1株(0.3%),Citrobacter farmeri 1株(0.3%)であった。遺伝子型はCTX-M9型が26株(7.8%),CTX-M2型が2株(0.6%),CTX-M1型が2株(0.6%),SHV型が1株(0.3%)であった。プラスミド遺伝子のreplicon typeは,E. coliでIncF(FIA,FIB,FIC)groupが最も多く18株中14株であった。E. cloacaeではP型が8株中5株であった。また,同一検体から分離されたE. cloacaeC. freundiiは共にA/C型であり,腸内でのプラスミドの授受を示唆する結果であった。日本におけるESBL産生菌検出の報告は5%前後であるが,今回の検討ではそれを上回る結果であり,高頻度に腸内へESBL産生菌が定着していることを示唆する結果であった。また,今回使用したchromIDTM ESBLは24時間でESBL産生菌のスクリーニングを行うことができるため,迅速な検出が可能となり,その後の院内感染対策などの対応にも有用であると考えられた。
Keywords ESBL, Enterobacteriaceae, chromID, replicon type, screening
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