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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 日本国内における新型インフルエンザの流行について
論文言語 J
著者名 安井 良則, 島田 智恵, 多田 有希, 谷口 清州, 岡部 信彦
所属 国立感染症研究所感染症情報センター
発行 臨床微生物:20(2),105─112,2010
受付 平成22年5月10日
受理
要旨  2009年4月のその存在が明らかとなったブタ由来の新型インフルエンザA/H1N1の日本国内での最初の発生は,2009年5月16日に神戸市と大阪府で相次いで報告された。いずれも高校での渡航歴とは関係のない集団発生であり,地域内流行から全国的な流行へ発展する可能性も高かったが,これらは両地域の広範な学校休業を中心とした対策によって鎮静化していった。日本国内での新型インフルエンザの本格的な流行の開始は2009年の8月(第33週)からであり,流行のピークは第48週(定点当たり報告数39.64),流行の期間は2010年第10週までの29週間であった。流行の規模は過去11シーズン中では最大であったものの,そのピークは過去の季節性インフルエンザの流行を超えるものではなく,その一方で流行期間は最長であった。今回の新型ンフルエンザの流行による日本国内での死亡率は,米国など他の国々と比較しても低いものであると考えられるが,これには罹患した場合の重症化率や死亡率が高い年齢層の発病者の割合が低かったことや,短期間に発病者が集中的に発生するといった流行形態ではなかったために,新型インフルエンザ患者を診察・治療する医療体制が維持できたことが関与しているものと思われる。今後の新型インフルエンザの流行や推移については不明であるが,その動向には今後とも注意して観察する必要がある。
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