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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 地域中核病院における血液培養2セット採取促進活動と培養陽性率の増加
論文言語 J
著者名 松村 康史1,2), 清水 恒広1), 林 彰彦3)
所属 1)京都市立病院感染症科
2)現 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
3)京都市立病院臨床検査技術科
発行 臨床微生物:20(3),169─176,2010
受付 平成21年12月20日
受理 平成22年7月12日
要旨  日本では全般に血液培養の実施数が少なく,適正な感染症診療をするために必須の起炎菌同定が難しい。さらに,1セット採取が多いため,検出菌が汚染菌かどうかの判断が困難である。586床の地域中核病院で,研修医教育や血液培養陽性者の診療を通じて血液培養2セット採取促進活動を行った。2005年は介入前,2006年から2008年は介入1年目から3年目である。採取セット数は4年間で2,002,3,012,3,537,3,984と増加した。同日に2セット以上で提出された場合を一人とし,全検査人数で割った2セット以上率は成人で12%,56%,87%,92%と増加した。全体の汚染率は平均0.9%で年次変移に乏しかったが,成人外来の汚染率は平均1.5%と高い傾向であった。1セット当たりの平均陽性率は成人外来18.0%,成人入院12.5%,小児8.1%の順に高かった。全体の平均陽性率は13.1%で年次変移はなかったが,一人当たりの陽性率は1セットで10.2%,2セット以上で16.4%と有意に高かった。1セットに対し2セット以上採取の陽性率比は1.60倍(95%信頼区間1.41~1.80)であった。2セット提出数が増加した理由には,実際の診療を通じて血液培養2セット提出の重要性を担当医に説明したこと,血液培養が必要な患者を多数診療している研修医を集中的に教育したことが挙げられる。このような血液培養2セット採取促進活動は,日本の感染症診療の質を向上させる重要な一歩である。
Keywords 血液培養2セット, 研修医教育, 汚染率, 陽性率
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