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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 自動血液培養で陽性シグナルを呈しなかったCapnocytophaga canimorsusによる敗血症の一症例
論文言語 J
著者名 古谷 明子1), 吉田 里美1), 久保 綾1), 山下 麻衣子1), 伊藤 達章1), 鈴木 道雄2), 今岡 浩一2), 大楠 清文3)
所属 1)佐世保共済病院中央臨床検査科
2)国立感染症研究所獣医科学部
3)岐阜大学大学院医学系研究科病原体制御学分野
発行 臨床微生物:20(3),182─187,2010
受付 平成22年2月1日
受理 平成22年4月30日
要旨  Capnocytophaga canimorsusはイヌやネコの口腔内常在菌であるが,まれに咬傷による敗血症例が報告されている。筆者らは,イヌ咬傷により敗血症性ショックに陥った症例を経験した。症例は44歳男性。既往歴は慢性蕁麻疹,尿路結石である。2008年11月3日,飼いイヌに右示指を咬まれ,右示指末節骨開放骨折を認めたため手術目的で入院となったが経過は順調であった。11月6日に激しい頭痛があり,翌日には食思不振,下痢,呼吸苦,顔面に皮疹,手指に水泡,足底にチアノーゼが出現した。11月8日に静脈血液培養2セットを開始したが,培養3日を経過しても陽性反応を示さなかった。そこで,直接ボトル内の血液を抜き取りグラム染色を行った結果,ボトル4本中2本で糸状のグラム陰性桿菌を確認した。患者背景よりC. canimorsusを疑い,血液培養液から直接16S rRNA遺伝子配列の解析を行いC. canimorsusを確認した。後日分離された患者由来菌株および飼いイヌの口腔内ぬぐい液検体の16S rRNA遺伝子配列を決定した結果,いずれもC. canimorsusと同定された。
Keywords Capnocytophaga canimorsus, 犬咬傷, 血液培養, グラム染色, PCR
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