学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

書誌情報


download PDF Full Text of PDF (921K)
Article in Japanese

論文名 尿路感染症由来基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌における多剤耐性化傾向とCTX-M-27の増加
論文言語 J
著者名 服部 達也1), 中根 邦彦1,2), 川村 久美子1,3)
所属 1)名古屋大学大学院医学系研究科・医療技術学専攻
2)岡崎市総合検査センター・衛生検査班
3)名古屋大学医学部保健学科・検査技術科学専攻
発行 臨床微生物:21(1),25─34,2011
受付 平成22年7月30日
受理 平成23年1月14日
要旨  2007年12月から2008年2月に愛知県下7施設において,尿路感染症患者から分離されたEscherichia coli 312株に対し,Clinical and Laboratory Standards Institute勧告法に準じた薬剤感受性試験およびdouble-disk synergy testを行った結果,15株(4.8%)がextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌であった。そのうち,13株はlevofloxacin(LVFX)に対し,7株はLVFXおよびtrimethoprim/sulfamethoxazole(TMP/SMX)に対しても耐性を獲得しており,ESBL産生菌の多剤耐性化傾向が確認された。これらESBL産生15株の遺伝子型別は,8株がblaCTX-M-27,4株がblaCTX-M-14であり,blaCTX-M-27保有株のほうがceftazidimeに対し低感受性を示す傾向にあった。また,ESBL産生菌でLVFXに対し耐性を示す13株のうち7株が血清型O25:H4であり,フルオロキノロン耐性と血清型との関連性が示唆された。blaCTX-Mを保有したプラスミドは約3.4×10-5 cells/recipientの効率で接合伝達し,その際TMP/SMX耐性も同時に伝播していた。本研究により,尿路感染症由来E. coliでは,CTX-M-27を産生する血清型O25:H4が増えつつあることが明らかとなった。これら多剤耐性ESBL産生菌の蔓延を食い止めるためには,耐性菌の分子疫学的な解析および積極的な疫学調査から,その背景を知ることが重要であると考える。
Keywords extended-spectrum β-lactamase, uropathogenic Escherichia coli, CTX-M-27, 多剤耐性化
Copyright © 2002 日本臨床微生物学会 All rights reserved.