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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 緑膿菌におけるAAC(6´)-Iae産生株の検出状況
論文言語 J
著者名 霜島 正浩1), 坂入 和宏1), 小川 美保1), 秋山 徹2), 田中 雅士3), 楢原 謙次3), 切替 照雄2), 賀来 満夫4)
所属 1)(株)ビー・エム・エル細菌検査部
2)国立国際医療研究センター研究所感染症制御研究部
3)(株)ミズホメディー開発部
4)東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座
発行 臨床微生物:21(4),247─252,2011
受付 平成23年4月6日
受理 平成23年9月5日
要旨  緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は湿潤環境に存在する常在菌である。しかし近年,複数の薬剤に耐性をもつ多剤耐性緑膿菌(MDRP multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa)が出現し,医療現場において,危険で重要な起因菌として認識されている。そのため,院内感染防止対策や治療を行うに当たって,早期に,迅速に,検出する必要がある。緑膿菌が獲得する耐性因子の中で,アミノグリコシド系薬剤に対して高度に耐性をもつ因子であると考えられているアミノグリコシド6´-N-アセチル基転移酵素AAC(6´)-Iaeがある。この耐性因子をイムノクロマト法の原理に基づき,培養コロニーから簡便・迅速に検出できる「AAC(6´)-Iaeクロマト」7)が開発された。今回このAAC(6´)-Iaeクロマトを使用する機会を得たため,全国から収集された緑膿菌のAAC(6´)-Iae保有率の調査を実施した。2009年から2010年にかけて全国から分離された薬剤耐性の緑膿菌297株を対象にAAC(6´)-Iaeの検出を行ったところ,これまで報告されていた関東・東北などの医療施設のみならず,九州・沖縄から北海道まで全国的に分散していることが新たに明らかとなった。薬剤感受性試験でMDRPと分類された254株においては152株(59.8%)でAAC(6´)-Iaeが検出され,単剤または2剤に対して耐性をもつ緑膿菌においては43株中6株(13.9%)でAAC(6´)-Iaeが検出された。一方,薬剤感受性試験で3剤共に高度に耐性を示すとされる高度多剤耐性緑膿菌株は254株中34株(13.4%)存在しており,この34株のうち31株という高頻度(91.2%)でAAC(6´)-Iaeを保有していることがわかった。高度多剤耐性緑膿菌株においてはAAC(6´)-Iaeの関与を裏づける結果となった。このような薬剤耐性因子の検索は遺伝子検査法が主流であるが,実際に遺伝子検査を実施できる施設は限られている。本方法はこれまで遺伝子検査が不可能であった施設での検査を可能とし,薬剤耐性因子の検査・診断技術を大きく向上させたと言えるだろう。また,従来法に比べ簡便・迅速に検出することができるため,院内染対策上有用であると考えられる。
Keywords 多剤耐性緑膿菌, 高度多剤耐性緑膿菌, MDRP, AAC(6´)-Iaeクロマト, AAC(6´)-Iae抗原, アミノグリコシド耐性
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