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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 癌患者胆汁から培養検出されたRhizomucor variabilisの同定と問題点
論文言語 J
著者名 入村 健児1), 野中 修一1), 宮副 由梨2), 西村 和子3)
所属 1)国立病院機構 佐賀病院検査科, 2)同内科*
3)獨協医科大学医学部微生物学講座,株式会社ファーストラボラトリーズ
*現在は日本赤十字社長崎原爆諫早病院内科
発行 臨床微生物:21(4),260─269,2011
受付 平成23年6月1日
受理 平成23年8月9日
要旨  黄疸のある浸潤性腎盂癌患者の経皮経肝胆管ドレナ-ジ液を培養した結果,細菌2菌種,Candida albicansおよび接合菌1菌種が分離された。この接合菌は生育が早く,隔壁の少ない太い菌糸からなる灰黄色で綿状の集落を形成し,菌糸に厚膜胞子を形成した。胞子嚢柄は無色,少ないが枝分かれし,基部に仮根はなかった。胞子嚢は黄褐色,球形,胞子嚢下部にアポフィーシスはなかった。胞子嚢胞子は形,大きさが著しく多様であった。これらの形態はRhizomucor variabilisに酷似し,最高生育温度が38℃である点も一致した。ITS領域の配列はR. variabilisと100~99%一致した。以上から,本分離株はR. variabilisと同定された。胆汁スメアーのHEおよびPAS染色標本においてカンジダの仮性菌糸,出芽胞子と共に太い菌糸と厚膜胞子が認められた。また培養した接合菌の集落から作成したスメア-のHEおよびPAS染色でも太い菌糸と厚膜胞子が認められた。すなわち,本分離菌は混合感染の原因菌種の一部と推定された。われわれの調べた限りでは胆汁から接合菌が分離培養された例はなく,R. variabilisの内臓検体からの報告もない。中国において本菌種による皮膚接合菌症が報告されており,最近本邦でも同症が現れている。今後,内臓接合菌症の培養検査とスメアー検査を積極的に行う必要がある。
Keywords Rhizomucor variabilis, 内臓接合菌症, 胆汁スメアー, HE染色
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