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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 ヒトにおける感染症起因菌としてのLactococcus garvieae
論文言語 J
著者名 岡本 陽, 荒川 宜親
所属 名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学
発行 臨床微生物:22(1),1─12,2012
受付 平成24年1月16日
受理
要旨  Lactococcus garvieaeは,ウシの乳腺炎や岸養殖漁場において魚のレンサ球菌症の原因菌として知られている。まれに心内膜炎などの起因菌としてヒトの血液培養から分離されるものの,健常者の糞便などからも分離されることがあることから,ヒトに対する病原性は低いと考えられてきた。しかしながらL. garvieaeは同様の疾患の原因菌となりうるレンサ状球菌であるEnterococcus属やStreptococcus属と形態学的,および生化学的性状がよく類似しており,これらの性状に基づく鑑別は難しいと考えられる。PCR法を基礎とするような分子生物学的手法によりL. garvieaeの検出,鑑別は可能であると考えられるが,病原菌としての認知度が低いこともあって,一般的な病院検査室ではEnterococcus属やStreptococcus属の種分類不能菌と誤判定され,見逃されている可能性もある。これまでの症例報告によると,L. garvieae感染症に対する大きなリスク要因は次の2点である;(i)サシミの喫食や漁場での勤務など,魚介類との濃厚接触,および(ii)循環器系,あるいは消化器系に基礎疾患を持つ。今後,高齢化社会を迎えリスク要因となりうる基礎疾患を持つ年齢層の割合も高くなる本邦では,L. garvieaeに対する関心をこれまで以上に高める必要がある。
Keywords Lactococcus garvieae
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