学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 培地のイオン濃度が黄色ブドウ球菌のMRSA判定に及ぼす影響
論文言語 J
著者名 山口 哲央1), 東條 浩幸2), 千葉 勝己3), 松本 哲哉1)
所属 1)東京医科大学微生物学講座
2)栄研化学株式会社品質管理部
3)東京医科大学病院中央検査部
発行 臨床微生物:22(1),20─27,2012
受付 平成23年10月19日
受理 平成23年12月13日
要旨  われわれは,微量液体希釈法に用いる培地中のCa2+濃度を変えると,Oxacillin(MPIPC)の薬剤感受性が大きく変化することを経験した。MPIPCのMICがbreak pointに近い菌株では培地中のCa2+濃度によってMRSA判定が変わる可能性がある。そこで今回,東京医科大学病院で2007年7月から2009年3月までの期間に分離されたIPMのMIC≤1 μg/mlの条件を満たすMRSA 40株,2010年6月に分離されたMSSA 50株およびMSSA標準株2株(ATCC29213およびATCC25923)を対象とし,イオン濃度の異なる培地を使用して微量液体希釈法にてMPIPCのMICを測定した。臨床分離MRSA株を対象とした解析では,Mueller-Hinton Broth(MHB)を用いた場合と比較すると,陽イオン調整MHB(CAMHB)を用いた場合,すべての株でMPIPCのMICの上昇が認められ,最大でMICが7管上昇する菌株も存在した。MSSAでは52株中,48株でMICの上昇を認めた。また,CLSIより推奨されているCAMHBのCa2+濃度(20~25 mg/L)では,MRSA(mecA)40株中5株がMSSAと判定されたが,Ca2+濃度を50 mg/Lに調整するとすべての株がMRSAと判定された。Mg2+においても,Ca2+ほどの影響は認めなかったものの,同様の傾向が示された。微量液体希釈法を用いてStaphylococcus aureusの薬剤感受性を測定する場合,培地のCa2+濃度がMPIPCのMICに強く影響することが示された。MRSA判定にも影響する事象であり,正確な薬剤感受性検査を行ううえで,培地の適正Ca2+濃度は再検討する必要がある。
Keywords methicillin-resistant Staphylococcus aureus, cation, MPIPC, Mueller-Hinton Broth
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