学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

書誌情報


download PDF Full Text of PDF (345K)
Article in Japanese

論文名 結核菌群リファンピシン耐性遺伝子同定キット「ジェノスカラー・Rif TB」の実用性評価とリファンピシン耐性結核状況の推測
論文言語 J
著者名 吉田 志緒美1), 富田 元久2), 木原 実香2), 吉川 裕之3)
所属 1)独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター
2)独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床検査科
3)独立行政法人国立病院機構刀根山病院 臨床検査科
発行 臨床微生物:22(1),42─48,2012
受付 平成23年8月3日
受理 平成23年12月24日
要旨  今回,われわれはジェノスカラー・Rif TB(Line probe assay: LiPA)の実用性と結果から推測されるリファンピシン(RFP)耐性結核状況の信頼性を検討した。当センターに新規入院された患者由来の塗抹陽性かつ培養陽性であった753検体のうちLiPAで十分な増幅を確認できた750検体についてLiPAと薬剤感受性検査の結果を比較検討したところ,LiPAでRFP感受性とされた715検体由来715株のすべてと耐性とされた35検体由来の35株のうち33株がMGIT-ASTの結果と一致した。RFP耐性株のうち6株がRFP単独耐性,27株が多剤耐性結核菌(MDR-TB)となり,LiPAのMDR-TB的中率は77.1%(27/35),MDR-TBを陽性と判定する感度は100%となった。同キットは適切な操作を行った場合でも,いくつかの耐性遺伝子変異を忠実に反映できなかった場合が見られたが,喀痰以外の希少な臨床材料に対しても明確なバンドパターンが認められた。したがって,同キットの検出限界を把握し,臨床症状や複数の検査結果から総合的に判断する必要があるものの,臨床現場におけるMDR-TBスクリーニングとしての有用性が示唆された。一方,LiPAは4年間の運用成績から地域における結核菌のRFP耐性パターンやその頻度の把握と耐性結核状況の推測が可能であった。当センターにおける同時期の結核統計データと比較してもほぼ変化はなく,疫学データとして信頼性はあると思われた。
Keywords 結核菌群, リファンピシン, rpoB遺伝子, Line probe assay, MDR-TB
Copyright © 2002 日本臨床微生物学会 All rights reserved.