学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Tsukamurella pulmonisによる腹膜透析関連腹膜炎の1例
論文言語 J
著者名 永松 麻希1), 高木 妙子1), 大柳 忠智1), 黒沢 未希1), 積田 奈津希1), 竹村 弘2), 大楠 清文3)
所属 1)聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部
2)聖マリアンナ医科大学微生物学教室
3)岐阜大学大学院医学研究科病原体制御分野
発行 臨床微生物:22(2),154─160,2012
受付 平成24年2月3日
受理 平成24年4月15日
要旨  慢性腎不全のため持続的携帯型腹膜透析(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis;CAPD)を導入している患者においてTsukamurella pulmonisによる腹膜透析関連腹膜炎を経験した。症例は67歳,男性。2008年8月浴室でCAPDのキャップが外れ,その後CAPD排液が濁り,腹痛も出現した。CAPD排液グラム染色にて,多数の白血球とともにグラム陽性桿菌の貪食像が観察されたため,腹膜透析関連腹膜炎と診断された。集落の発育所見からはTsukamurella属が疑われた。菌種は16S rRNA塩基配列による系統解析によってT. pulmonisと同定された。治療はsulfamethoxazole-trimethoprim内服,amikacin腹腔内投与で開始し,薬剤感受性結果判明後levofloxacin,rifampicin内服へ変更され,その10日後テンコフカテーテルが抜去された。その後,発熱と炎症反応の改善が認められた。海外ではCAPD排液よりTsukamurella属が検出された症例は数例報告があるものの,本邦では認めていない。CAPD排液の菌種の同定を行う際に,Tsukamurella属菌を含めて生活環境に生息する菌も考慮する必要がある。
Keywords Tsukamurella pulmonis, 腹膜透析関連腹膜炎, CAPD排液
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