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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
同定に苦慮したClostridium botulinumによる乳児ボツリヌス症の1症例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
木部 泰志1), 諸熊 由子1), 清祐 麻紀子1), 實藤 雅文2), 持丸 朋美1), 栢森 裕三1), 原 寿郎2), 康 東天1),3) |
所属 |
1)九州大学病院検査部
2)九州大学病院小児科
3)九州大学大学院医学研究院臨床検査医学 |
発行 |
臨床微生物:22(3),221─226,2012 |
受付 |
平成24年3月22日 |
受理 |
平成24年6月2日 |
要旨 |
患者は9カ月の女児。哺乳不良で近医を受診され,意識障害があるとして急性脳症として治療されたが症状は改善せず,当院へ転院となった。転院時の検査で炎症所見やその他の異常は認めなかったが,呼吸状態の悪化や脳神経と四肢の麻痺が出現し,乳児ボツリヌス症が疑われ便培養が提出された。塗抹検査で亜端在性有芽胞グラム陽性桿菌が優位であり,嫌気培養で遊走を示すコロニーが分離された。同定キットでClostridium difficileと同定されたが,コロニーの特徴はC. difficileと大きく異なり,臨床症状からもClostridium botulinumが強く疑われた。その後,外部機関でC. botulinumと同定され,A型毒素が証明されたことより乳児ボツリヌス症の診断に至った。本菌の分離には臨床との情報交換が不可欠であった。また現行キットでの菌種確定は困難で誤同定されることもあるため,疑わしい菌が分離された場合は直ちに外部機関に精査を依頼すべきである。 |
Keywords |
乳児ボツリヌス症, Clostridium botulinum, 有芽胞グラム陽性桿菌, 遊走, 同定キット |
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