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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 既知赤痢菌血清に反応しなかったShigella boydiiによる下痢症の1例
論文言語 J
著者名 口広 智一1), 宮田 佳穂里2), 河村 真保3), 甲斐 明美3)
所属 1)公立那賀病院 中央検査科
2)公立那賀病院 内科
3)東京都健康安全研究センター 微生物部
発行 臨床微生物:22(4),284─288,2012
受付 平成24年7月5日
受理 平成24年9月13日
要旨  Shigella boydiiは海外旅行者下痢症の一因である赤痢菌のC群に分類されているが,本邦での分離はまれである。今回われわれは既知の赤痢菌抗血清に反応しなかったS. boydiiによる下痢症を経験した。17歳,男性,平成22年4月にインドに旅行し帰国2日後39.7度の発熱,腹痛,水様下痢を認めたため当院内科を受診した。海外旅行者下痢症を疑い便培養と血液培養を施行しFosfomycinが処方された。便培養にてSS寒天,BTB乳糖加寒天培地上で赤痢菌を疑う乳糖非分解集落が形成された。集落の同定検査では自動機器によりShigella groupと判定され,試験管培地での生化学的性状試験では乳糖分解能,ガス産生,運動性および酢酸塩利用能が陰性であり赤痢菌を強く疑う性状を示した。しかしすべての市販の赤痢菌抗血清に凝集を示さず菌種同定に至らなかったため精査したところ,2002年に松下らが報告したS. boydiiの新血清型(仮称SM00-27)であることが判明した。本菌はまれな菌種であり,赤痢菌同定に不可欠な血清型別試験で反応を示さなかったため同定に苦慮した。また本菌は多剤耐性傾向にあり,ニューキノロン低感受性菌であったことから抗菌薬治療に注意が必要な菌種であると考えられた。
Keywords Shigella boydii, 海外旅行者下痢症, 細菌性赤痢, 血清型
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