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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 劇症型溶血性レンサ球菌感染症の分子メカニズム
論文言語 J
著者名 阿戸 学1), 池辺 忠義2), 渡邉 治雄3)
所属 1)国立感染症研究所免疫部
2)国立感染症研究所細菌第一部
3)国立感染症研究所所長
発行 臨床微生物:23(2),79─86,2013
受付 平成25年5月2日
受理
要旨  劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)は,一旦発病すると急速に進行し,ショック症状,多臓器不全などをともなう,致死率の高い重篤な感染症である。集団発生がきわめてまれであるという特徴から,宿主の要因以外に劇症型感染の主たる起因菌であるA群レンサ球菌に変異が生じている可能性が示唆されたが,その詳細は長年不明であった。筆者らは,20年余りにわたり,国立感染症研究所と地方衛生研究所を中心に構成する衛生微生物技術協議会溶血性レンサ球菌レファレンスシステムセンターと共同して,我が国で発生した劇症型レンサ球菌感染症の臨床分離株を収集し,劇症型レンサ球菌感染症の発症に強く関与する菌遺伝子群を同定した。さらに,劇症型レンサ球菌感染が,細菌感染に対する主要な防御担当細胞である好中球の防御能修飾をもたらすという,本感染症の病態形成機序の解明につながる知見を明らかにした。本総説では,これらの知見を通して,本感染症に対する将来的な対策を展望する。
Keywords streptococcal toxic shock-like syndrome, pathogenic factors, two-components regulatory system, neutrophil
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