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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 話題の薬剤耐性菌:新型カルバペネマーゼOXA-48型産生Enterobacteriaceaeの出現
論文言語 J
著者名 長野 則之1,2,3), 長野 由紀子2), 荒川 宜親3)
所属 1)船橋市立医療センター 微生物検査室
2)国立感染症研究所 細菌第二部
3)名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学/耐性菌制御学
発行 臨床微生物:23(3),175─185,2013
受付 平成25年7月16日
受理
要旨  イミペネムやメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬は重篤な細菌感染症の治療に用いられるいわゆる“last resort”としての重要な役割をもつことからカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の広がりが臨床上新たな懸念の一つとして認識されてきている。本稿では新型カルバペネマーゼのOXA-48型産生CREについて述べる。OXA-48型カルバペネマーゼのプロトタイプであるOXA-48産生株は2001年にトルコで分離されたKlebsiella pneumoniaeで初めて確認されて以降欧州各国で急速に広がり問題となってきている。最近では米国,カナダからも報告されている。国内では2012年11月東南アジアで治療歴を有する海外帰国事例よりカルバペネム系薬のMICが軽度上昇したOXA-48カルバペネマーゼ産生K. pneumoniae 2株及びE. coli 1株が初めて確認された。OXA-48カルバペネマーゼ単独産生K. pneumoniaeでは広域スペクトラムセファロスポリン系薬感性であったため日常検査での検出は困難と考えられるが,tazobactam/piperacillin耐性且つmodified Hodge test陽性が検出の指標として有用であった。CREをはじめ多種多様な薬剤耐性菌が医療機関に入ってくることは避けられない事実である。そこで海外からの新型耐性菌の流入を引き続き監視し,早期検出と適切な感染制御の実施によりそれらの国内での蔓延を防止する必要がある。
Keywords OXA-48型, カルバペネマーゼ, カルバペネム低感受性, CRE, Tn1999
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