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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 整形外科患者を中心にアウトブレイクを認めたtoxin A陰性toxin B陽性Clostridium difficile株の分子疫学的解析
論文言語 J
著者名 安藤 隆1), 河野 緑2), 佐々木 十能3), 永野 裕子3), 兼本 園美1), 平田 龍三1), 杉本 健一1), 長谷部 恵子4), 吉川 晃司4), 清田 浩4)
所属 1)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター中央検査部
2)東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座
3)東京慈恵会医科大学附属病院
4)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター感染制御チーム
発行 臨床微生物:23(3),186─193,2013
受付 平成25年1月30日
受理 平成25年6月20日
要旨  当院(病床数353床,全9病棟)のA病棟でClostridium difficile感染症(CDI)の集団発生を認めた。このため流行時期を含めた6ヶ月間に糞便中C. difficile毒素検査が陽性であった20症例のうち,C. difficile菌株が分離できた15症例について臨床背景の調査と分離菌株のタイピング解析を行った。15症例中4症例からtoxin A陽性toxin B陽性(AB)株が分離され,パルスフィールドゲル電気泳動法とPCRリボタイピング法による型別で2タイプに分けられた。残る11症例からはtoxin A陰性toxin B陽性(AB)株が分離され,両タイピング結果よりすべて同一株であることが示唆された。toxin AB株はいずれも検出された患者間に病棟の重複はなかった。toxin AB株は半年間にわたって異なる病棟で検出されており,院内の環境が本菌株により汚染されている可能性が考えられた。集団発生があったA病棟では短期間に整形外科患者6症例がCDIを発症し,6症例から分離された菌株がすべて同一タイプであったことから交差感染が疑われた。6症例中5症例では術後感染の予防に複数の抗菌薬が長期間使用されており,標準予防策や接触感染予防策の徹底と抗菌薬使用の適正化を行った。当院で流行したC. difficile分離菌株のタイピング解析を行うことで伝播状況が把握でき,その後の対応に有用であった。
Keywords Clostridium difficile, PFGE, PCRリボタイピング, 毒素遺伝子, 医療関連感染
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