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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 イムノクロマト法インフルエンザウイルス抗原検出キットBDベリターシステムFluにおける機器判定の感度とその目視判定に対する優越性の検討
論文言語 J
著者名 山口 育男1), 青山 知枝1), 山本 優1), 木下 恵子1), 伊藤 由美1), 西村 秀一2)
所属 1)豊橋市民病院中央臨床検査室
2)独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター
発行 臨床微生物:23(3),213─218,2013
受付 平成25年4月30日
受理 平成25年7月31日
要旨  インフルエンザウイルス抗原検出キットは,その迅速性と簡便性からイムノクロマト法を用いたものが主流であり,診断に幅広く活用されている。しかし,簡便である一方でその判定結果の信頼性については常に注意が必要である。目視による人為的な判定の過ちや判断基準の違い,キットによる違いなど,より良い診断のためにはその実態について十分に理解を深める必要がある。今回我々は,専用のデンシトメトリー分析装置によりイムノクロマト法の結果判定を行うBDベリターシステムFluを使用し,目視判定と機器判定の感度の差異を検証する試験を行った。臨床検査技師を含む病院関係者計84名を職種ごとに3つのグループに分けて,それぞれのグループで判定を行い,デンシトメトリー分析装置による判定と比較検討を行った。その結果,キット付属のポジティブコントロールを検出限界付近濃度に調整した試料において機器判定と目視判定の結果に差異が認められ,その程度はグループ間で異なっており,またグループによっては個人差が大きかった。また,BDベリターシステムFluと市販されている既存の目視判定を行うインフルエンザウイルス抗原検出キットとの間にウイルス抗原検出感度に性能差があるか否かを検証した。近年分離されたインフルエンザウイルスA型H1N1(Seasonal:2009年)株,A型H1N1(Pandemic:2009年)株,A型H3N2(Seasonal:2012年)株およびB型(Seasonal:2012年)株の細胞培養液を使用し最小検出感度ならびに検出までの時間を比較した。その結果,調査対象の全ウイルス標品においてBDベリターシステムFluによる機器判定が,既存のキットによる目視判定に比べ高い検出感度を示し,また検出に要する時間が短かった。以上のことから感度,特にウイルス含有量の低い検体での検査感度において,従来のイムノクロマト法での目視による検査に比べ高い検出性能を持つことが示された。
Keywords インフルエンザ, 抗原検出キット, イムノクロマト, デンシトメトリー, ベリター
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