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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Mycobacterium arupenseによる前腕軟部腫瘤の1例
論文言語 J
著者名 小川 佳亮1), 佐藤 志律江1), 古川 政雄1), 峰岸 正明1), 吉川 弥須子2), 田中 孝昭3), 中永 和枝4), 石井 則久4)
所属 1)独立行政法人国立病院機構宇都宮病院臨床検査科
2)独立行政法人国立病院機構宇都宮病院呼吸器内科
3)独立行政法人国立病院機構宇都宮病院整形外科
4)国立感染症研究所ハンセン病研究センター
発行 臨床微生物:24(1),17─22,2014
受付 平成25年6月26日
受理 平成25年11月5日
要旨  本邦3例目にあたるMycobacterium arupense感染症の1例を経験した。症例は76歳男性,右前腕掌側の腫脹,疼痛を主訴に近医から当院紹介された。関節リウマチ(RA)と診断し治療開始後,症状は一旦改善したが,約2年後に腫脹の増悪を認め,創部からM. arupenseを検出した。非結核性抗酸菌(NTM)症の診断で,化学療法及び外科的療法により治癒した。NTMによる滑膜炎はRAと臨床所見が酷似するため,診断に苦慮することが多く,菌の分離同定後に治療が開始されることが多い。本症例は数回にわたり抗酸菌検査が実施されたが,培養検査で本菌を分離できずに診断の遅れを招いた。これは,M. arupenseが37℃では発育し難い菌であることが要因であり,30℃と37℃の両温度下で抗酸菌培養を実施することの重要性が示唆された症例であった。
Keywords 抗酸菌, 非結核性抗酸菌, Mycobacterium arupense, 関節リウマチ, 滑膜炎
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