論文名 |
腹腔内膿瘍を繰り返しMycoplasma hominisが原因と思われた一症例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
高橋 真帆1), 大屋 貴美子1), 亀村 綾2), 見理 剛3) |
所属 |
1)下越病院検査課
2)下越病院外科
3)国立感染症研究所細菌第二部 |
発行 |
臨床微生物:24(3),195─200,2014 |
受付 |
平成26年2月4日 |
受理 |
平成26年5月21日 |
要旨 |
症例は48歳女性,2012年6月旅行帰宅後より腹痛出現。腹部症状の悪化と発熱の継続があったため,CT検査を施行した。検査によって卵巣のう腫と思われた部位からエコー下穿刺にて膿の排出を行い,培養へ提出した。培養1日目と2日目に菌の発育は認めなかったが3日目に5% CO2培養と嫌気培養で培地上に水滴状のコロニーの発育を認めた。グラム染色を行ったが菌体は確認できず,グラム陰性に染まる顆粒を認めるのみであった。以上の所見からMycoplasma hominisを疑い新潟市衛生環境研究所から,国立感染症研究所へ菌の同定を依頼した。検査の結果,16S rRNA遺伝子の塩基配列がすでに報告されているM. hominis PG21株のものとほぼ完全に一致したため,分離菌はM. hominisと同定された。感染経路を確認するため膣分泌物の培養も依頼し,同様のM. hominisが検出,同定された。これらの結果から常在菌のM. hominisによる感染が子宮か付属器から腹腔内に及んだ可能性が示唆された。上記のような培養結果が見られた場合は,患者背景を考慮した上でM. hominisによる感染症の可能性を疑い,β-ラクタム系薬剤だけでなくClarithromycin(CAM)や,Erythromycin(EM)などにもM. hominisは耐性であることを,検査室から報告することが重要である。 |
Keywords |
Mycoplasma hominis, 腹腔内膿瘍, 常在菌 |