学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 血液培養から分離されたAcinetobacter属菌の同定に関する検討
論文言語 J
著者名 東 由桂, 渡 智久, 柴崎 有紀, 米沢 太亨, 山内 紫織, 友田 豊, 藤井 聡
所属 旭川医科大学病院臨床検査・輸血部
発行 臨床微生物:25(3),213─222,2015
受付 平成26年12月5日
受理 平成27年3月5日
要旨  血液培養から分離されたAcinetobacter属菌35株,35症例を対象に菌形態,コロニー性状および各種培地での発育性の比較,簡易同定キット,質量分析法および遺伝子解析を実施した。さらに,検出された菌種により,血流感染症の臨床的重症度が異なるか否かを検証した。菌形態とコロニー形態,培地の発育性,簡易同定キットおよびバイテックMSでは,A. baumannii complex内の菌種を鑑別することは困難であった。non-A. baumannii complexは,A. baumannii complexと比較し,菌体が細い,またはコロニーが小さめでやや乾いた質感など形態的特徴を認めるものがあった。さらに,A. johnsoniiA. calcoaceticusおよびA. lwoffiiは一部のグラム陰性桿菌用選択培地に発育しなかった。rpoB遺伝子部分シークエンス(rpoB)の解析結果を基準にした各法の一致率はE/NF 77.1%,NID 62.9%,GN 88.6%およびMS 91.4%であった。16S rRNA遺伝子シークエンスとrpoBとの一致率は48.6%(17株/35株)であった。rpoBの解析からA. baumannii complexの内訳は,A. nosocomialisが50%と最も多く,次いで代表菌種のA. baumanniiは21.4%であった。A. baumannii complexの菌種間において,重症度に違いはみられなかったが,A. baumannii complexとnon-A. baumannii complexの間で重症度に有意差を認めた。したがって,両者を正確に鑑別することは重要であり,rpoBとの一致率,簡便性から両者の鑑別にはバイテックMSが有用であった。
Keywords Acinetobacter, Acinetobacter baumannii complex, 血液培養, バイテックMS
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