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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 クロモアガーオリエンタシオン/ESBL分画培地を用いたグラム陰性桿菌の簡易同定法とESBL産生菌の効率的な検出法の評価:質量分析法との同定精度の比較と費用対効果を含めた検討
論文言語 J
著者名 中山 麻美1), 大瀧 博文2), 大楠 清文3), 米玉利 準1), 白井 菜月1), 丹羽 麻由美1), 太田 浩敏1), 古田 伸行1), 渡邉 珠代4), 伊藤 弘康5), 村上 啓雄4), 清島 満5)
所属 1)岐阜大学医学部附属病院検査部
2)関西医療大学保健医療学部臨床検査学科
3)東京医科大学微生物学講座
4)岐阜大学医学部附属病院生体支援センター
5)岐阜大学大学院医学系研究科病態情報解析医学分野
発行 臨床微生物:25(4),304─313,2015
受付 平成27年3月19日
受理 平成27年6月8日
要旨  近年,自動同定機器や質量分析法の普及にともない,菌種の同定が迅速に行われるようになってきた。これらの同定法は,多くの集落の中から検査者が選定した菌株に対して適用されるが,臨床検体中には複数の菌種や薬剤耐性菌が混在している場合があり,複数の菌種あるいはクローンの集落から起炎菌や薬剤耐性菌を適切に選定して同定や感受性試験を実施できるかの根本的な問題はまだ解決されていない。今回われわれは,グラム陰性桿菌の菌種を集落の色調で識別できると同時にextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の有無を培養翌日に判定できるクロモアガーオリエンタシオン(CHO)/ESBL分画培地(関東化学)の特長を活用して迅速かつ効率的な簡易同定法を考案し,その基礎的な評価と日常検査における前向き検討を実施した。基礎的検討に用いたATCC標準株ほか既知の87菌株の同定精度は97.7%(85/87)であった。前向き検討では207検体から分離された264菌株の同定精度は98.6%(260/264)で質量分析法の93.1%(246/264)と比較して優れていた。ESBL産生菌と判定された20菌株は,全てESBL分画に発育を認めた。同定にかかる費用は従来法に比較して約62%削減できた。簡易同定法は,培養翌日に菌種の推定とESBL産生菌の有無を同時に把握することができるため,日常検査の効率化のみならず,迅速な治療抗菌薬の選択や医療関連感染対策においても有用である。
Keywords クロモアガーオリエンタシオン/ESBL分画培地, 簡易同定法, ESBL産生菌, 費用対効果
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