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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 院内伝播事例由来のカルバペネマーゼ非産生カルバペネム耐性Klebsiella pneumoniae ST37株の分子疫学的解析
論文言語 J
著者名 原田 崇浩1), 外山 雅美2,3), 長野 由紀子3,4), 荒川 宜親4), 長野 則之3,5)
所属 1)独立行政法人国立病院機構千葉医療センター臨床検査科
2)船橋市立医療センター微生物検査室
3)国立感染症研究所細菌第二部
4)名古屋大学大学院医学系研究科分子病原細菌学/耐性菌制御学分野
5)信州大学大学院医学系研究科医療生命科学分野
発行 臨床微生物:25(4),320─328,2015
受付 平成27年3月25日
受理 平成27年6月29日
要旨  2012年12月から2013年4月の間に同一病棟の入院患者3名の便よりカルバペネム系薬を含めたβ-ラクタム系薬に加え,他系統の薬剤に耐性を示す多剤耐性Klebsiella pneumoniae Kp1,Kp2株と,カルバペネム系薬感性を除きこれら2株と同じプロファイルを示すK. pneumoniae Kp3株が検出された。3名の入院期間に重複が認められ,院内伝播が示唆されたことからこれら3株の分子学的解析を行った。全株でプラスミド性AmpC β-ラクタマーゼであるDHA-1の遺伝子の保有が確認された。加えてプラスミド性キノロン耐性因子の遺伝子qnrBおよび16S rRNAメチレースの遺伝子armAも保有していた。3株は全てsequence type 37と同定され,PFGEプロファイルも同一であった。これらの結果から多剤耐性K. pneumoniaeによる院内伝播であることが結論づけられた。Kp1,Kp2株ではカルバペネマーゼ遺伝子が検出されなかったことから,DHA-1過剰産生に外膜蛋白欠損が加わることでカルバペネム系薬耐性を示すものと推測される。  なお,Kp3株が検出された時点で病棟のアクティブサーベイランスを実施したがDHA-1産生株は検出されなかった。その後継続的に,接触感染予防策を中心とした院内感染対策を徹底しているが,新規の本菌検出患者は認められていない。
Keywords K. pneumoniae, ST37, DHA-1, 院内伝播
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