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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 下痢症患者から分離された下痢原性大腸菌の各種病原因子の保有状況について
論文言語 J
著者名 磯崎 将博1), 小林 治2), 星子 文香1), 津嶋 かおり1), 金子 優1), 松下 久美子1), 北川 真喜3), 江成 博4)
所属 1)天草郡市医師会立天草地域医療センター検査部
2)七尾市公立能登総合病院臨床検査部
3)極東製薬工業株式会社製品開発部
4)岐阜大学生命科学総合研究支援センター嫌気性菌研究分野
発行 臨床微生物:26(1),24─29,2015
受付 平成25年12月9日
受理 平成27年8月29日
要旨  1996年から2012年の間に,下痢症患者より分離・同定した大腸菌の保存株161株を対象に各種病原因子の保有状況を調査した。PCR法によりEHEC 81株,EPEC 12株,EAggEC 5株,ETEC 3株,その他大腸菌60株に分類された。EHEC 81株ではeaeが74株(91%),hlyAが80株(99%),astAが7株(9%)から検出された。EPEC 12株ではhlyAastAが1株ずつ,ETEC 3株ではastAが1株から検出された。その他大腸菌60株で病原因子を保有していたものは,astA保有のわずか2株(3%)のみであった。血清型は,EHECではO157やO26などの主要血清型以外にも稀な血清型や血清型別不能株も含まれていた。またその他大腸菌の中にはこれまでEPECとして報告されてきた血清型が数多く含まれていた。したがって,従来法はある程度の精度を有する確立された検査法ではあるものの,稀な血清型や血清型別不能株の見逃しや,非病原性株を病原性株として報告してしまう可能性など,限界のある検査法といえる。よって,今後は血清型別を前提とした分類法に代わり,PCR法を用いた下痢原性大腸菌検査法を採用する必要があると考える。
Keywords 下痢原性大腸菌, 病原因子, PCR, 血清型別試験
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