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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 ヒトから分離されるBrachyspira属菌の同定と微生物学的特徴
論文言語 J
著者名 田中 洋輔1), 松本 裕子2), 島田 直樹3), 安西 桃子1), 大野 達也1), 小松 奈央1), 遠藤 昌江1)
所属 1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院臨床検査部
2)横浜市衛生研究所微生物検査研究課
3)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院病理診断科
発行 臨床微生物:26(1),30─40,2015
受付 平成27年6月22日
受理 平成27年9月20日
要旨  微生物検査目的に提出された腸管洗浄液526検体の直接塗抹グラム染色を実施し,Brachyspira属菌の検出をおこなった。腸管スピロヘータ症と判定した19例(3.6%)をヒツジ血液寒天培地にて嫌気培養をおこなったが,検出できたのは9例でB. pilosicoli 5例,B. aalborgi 4例が16S rRNA遺伝子解析により同定された。Brachyspira属菌の分離と生検組織における偽刷子縁が確認された例ではB. pilosicoliの偽刷子縁は7 μm程と長く,B. aalborgiの偽刷子縁は4 μm程で短く観察された。分離培養不能であった症例の多くは偽刷子縁の長さは短く観察され,培養困難なB. aalborgiであった可能性が示唆された。分離されたB. pilosicoliB. aalbogiはα-glucosidase,α-galactosidaseの性状の違いによりB. pilosicoliは3タイプに分かれ,B. aalborgiとは異なった。B. pilosicoli 4株についておこなった薬剤感受性試験ではペニシリン系薬に高いMICを示し,β-ラクタマーゼ試験陽性であった。解析が可能であった3株でblaOXA-136の保有が確認されたため,OXA-63バリアントのOXA-136産生株であると考えられた。当院の腸管スピロヘータ症は赤痢アメーバなどの原虫感染症や潰瘍性大腸炎などの併存疾患を有する男性に多くみられた。下部消化管内視鏡検査の際に腸管洗浄液を採取しBrachyspira属菌をグラム染色にて検出することにより迅速かつ検出頻度の上昇に繋がるものと考えられた。
Keywords Brachyspira pilosicoli, Brachyspira aalborgi, Intestinal spirochetosis, OXA-136, クラスDβ-ラクタマーゼ
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