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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 薄層免疫クロマトグラフィー法を用いた結核菌群検出キット「Qライン極東TB」の精度評価
論文言語 J
著者名 五十嵐 ゆり子1), 近松 絹代1), 青野 昭男1), 伊 麗娜2,3), 阪下 健太郎3,4), 大藤 貴2,3), 山田 博之1), 高木 明子1), 御手洗 聡1,3)
所属 1)結核予防会結核研究所抗酸菌部細菌科
2)結核予防会複十字病院呼吸器内科
3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
4)東京都立多摩総合医療センター呼吸器科
発行 臨床微生物:26(2),97─104,2016
受付 平成27年6月20日
受理 平成27年12月8日
要旨  結核菌群が特異的に産生するMPT64抗原の検出キットであるQライン極東TB(極東製薬工業)とキャピリアTB-Neo(タウンズ)について精度評価を行った。被検菌は抗酸菌基準株151種(結核菌群4種,非結核性抗酸菌147種),臨床分離菌155株(結核菌群105株,非結核性抗酸菌50株)とした。結核菌群基準株4種についてはどちらのキットも陽性であった。非結核性抗酸菌基準株147種について,Qライン極東TBは146種を陰性と判定し,Mycobacterium riyadhenseに対してのみ偽陽性を示した。キャピリアTB-Neoは147種全てを陰性と判定した。臨床分離株に対するQライン極東TBの感度は97.1%(102/105),特異度は100%(50/50)であり,キャピリアTB-Neoも全て同じ結果を示した。結核菌群偽陰性を示したのは,mpt64遺伝子の一部および全体を欠失しているMycobacterium tuberculosis 2株と,Mycobacterium bovis BCG Connaught 1株であった。小川培地およびMGIT陽性培養液を用いた結核菌基準株における検討では,全てQライン極東TB陽性であった。結核菌基準株の最小検出感度に関する検討では,Qライン極東TBは5.7×105 CFU/mL,キャピリアTB-Neoは2.9×106 CFU/mLまで明瞭に検出可能であった。  Qライン極東TBはM.riyadhenseに対する偽陽性を示したものの,コロニーが白色である等の特徴から容易に鑑別可能と考えられた。また臨床分離株についてはキャピリアTB-Neoと同等の高い検出精度を示した。しかしながら,Qライン極東TBもmpt64遺伝子に変異を持つ株に対しては偽陰性となることから,キャピリアTB-Neo等と同様の注意が必要と考えられた。
Keywords 結核菌群同定, イムノクロマトグラフィー法, 迅速診断
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