学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Pasteurella multocidaの分離状況と患者背景―最近9年間の成績―
論文言語 J
著者名 大橋 久美子1), 滝川 久美子1), 荒井 ひろみ1), 小栗 豊子2)
所属 1)順天堂大学医学部附属練馬病院
2)東京医療保健大学大学院医療保健学研究科
発行 臨床微生物:26(2),112─118,2016
受付 平成27年9月28日
受理 平成28年1月20日
要旨  2005年7月から2013年12月の8年6ヶ月間にPasteurellamultocidaが検出された17症例,19株の患者背景と細菌検査結果について検討した。  P. multocidaの検出症例数の年次推移はわずかながら増加傾向にあるものと考えられた。17症例は女性が13例と多数を占めた。年齢は3歳~97歳と分布し,60歳以上が全体の76.5%を占めた。菌株の由来材料は,創部と瘻孔が11例と半数を占め,喀痰が6例であった。喀痰検出例のうち2例はそれぞれ耳漏や血液からも検出された。動物接触歴は,創部検出例ではネコやイヌとの接触が確認されたが,喀痰検出例においては1例を除き動物との接触は確認できなかった。喀痰検出例の6例では,肺炎と診断されたのは3例で,そのうち1例は敗血症を伴う死亡例であった。1例は軽い呼吸器症状を認め,2例は無症状であった。このようにP. multocidaの感染症例は重症例から軽症例までみられた。  今回の検討では,動物接触歴が不明な症例が5例見られた。動物接触の有無について問診が行われたか否かが不明であり,検査室から動物接触について確認する必要があると考えられた。感染源を明らかにすることは,感染症の診断や予防に重要である。本菌検出時には検査側から担当医に動物から感染することが多いことを説明し,問診による感染源の追跡を徹底する必要がある。
Keywords Pasteurellamultocida, 咬傷, 呼吸器感染症, 敗血症
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