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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
希少菌種Mycobacterium septicumを検出した市中肺炎の一例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
小林 治1), 森田 絹代1), 鹿住 祐子2), 村本 信吾3) |
所属 |
1)七尾市公立能登総合病院臨床検査部細菌室
2)公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部結核菌情報科
3)七尾市公立能登総合病院内科 |
発行 |
臨床微生物:26(2),124─130,2016 |
受付 |
平成27年9月3日 |
受理 |
平成27年11月19日 |
要旨 |
症例は87歳,女性。2011年10月25日に37.7℃の発熱と倦怠感を認め,近医の胸部X線写真にて右肺に浸潤影を認めたため,同年11月2日に精査加療目的で公立能登総合病院内科を受診した。既往歴には肺結核,耐糖能異常(境界型糖尿病),高血圧症,脂質異常,心不全があった。胸部CT検査にて右肺下葉に肺炎像を認めた。吸引痰での細菌培養検査では,Streptococcus pneumoniae,嫌気性菌を含む複数菌に加え,2%小川培地に3日間で発育する抗酸菌が検出された。迅速発育抗酸菌が疑われ,検出菌のZiehl-Neelsen染色では抗酸性に染まる菌を確認した。DNA-DNA hybridization法では同定不能となったため,16S rRNA,rpoB,hsp65領域の塩基配列解析に加え,発育温度試験,糖利用能試験(mannitol,inositol,sorbitol)を実施した結果,Mycobacterium septicumと判定された。抗菌薬ceftriaxoneの投与にて肺炎像は縮小し症状は改善されたが,同菌は同じセファロスポリン系薬のcefotaximeにMIC値が>32 μg/mLと高値を示した。M. septicumは複数菌感染の一端を担っていた可能性があり,治療薬剤にも耐性であったことから,場合によっては菌交代を起こした可能性があったと思われる。M. septicumの細菌学的性状を記述しておくことは重要と考える。 |
Keywords |
肺炎, 複数菌感染, Mycobacterium septicum, 遺伝子検査, 抗菌薬感受性 |
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