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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
血液培養でListeria innocuaを検出した発熱性好中球減少症の一例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
守屋 任1), 村山 加奈子1), 後藤 信之1), 石井 幸雄1), 渡司 博幸2) |
所属 |
1)国立病院機構災害医療センター臨床検査科
2)国立病院機構東京病院臨床検査科 |
発行 |
臨床微生物:26(2),141─147,2016 |
受付 |
平成27年10月6日 |
受理 |
平成27年12月21日 |
要旨 |
69歳,女性,過去の化学療法により恒常的な好中球減少状態にあり,今回,発熱,下痢を主訴とした発熱性好中球減少症と診断され,血液培養によりListeria innocuaを検出した症例を経験した。L. innocuaは,食品衛生においてListeria monocytogenesより高頻度に検出される菌であり,肉類や乳製品だけでなく,野菜や果物など幅広く分離される菌種である。しかし,ヒトへの病原性はないものとして扱われているため,食品衛生法上でも管理されない菌種であり,日常的な摂食機会は比較的高い可能性が示唆されている。一方で,海外では免疫抑制症例における致死的なL. innocua感染症報告が散見されつつあり,好中球減少症をはじめとする易感染状態においては,日常的な食事における,本菌の存在について認識しておく必要があると考えられる。本症例は,入院時からMeropenemによる治療が開始され,血液培養陽転からVancomycinとCiprofloxacinが追加されて,軽快退院することができた。本来,Listeriosis治療の第一選択はAmpicillin(ABPC)であるが,発熱性好中球減少症診療ガイドラインに従い臨床的な改善が得られていたことや,L. innocua治療のエビデンスがなく,L. monocytogenesと同様にABPCにすることが適切であるか判断できなかったため変更しなかった。本症例のように稀な菌による感染症例においては,その病原性を明らかにし,治療法を確立していくために,重症例や治療失敗例だけでなく,治療奏功例についてもエビデンスを蓄積していくことが重要である。 |
Keywords |
Listeria innocua, 発熱性好中球減少症, 血液培養 |
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