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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
MALDI-TOF MS 2機種とバイテック2のnutritionally variant streptococciの同定精度の比較検討と同定に重要な生化学的性状の検討 |
論文言語 |
J |
著者名 |
古垣内 美智子1), 江成 博3), 吉田 敦4,6), 奥住 捷子5), 河村 好章7), 江口 香織1), 戸田 宏文1), 宇都宮 孝治1), 松浦 宏美1), 山口 逸弘1), 上硲 俊法2) |
所属 |
1)近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部
2)近畿大学医学部附属病院臨床検査医学
3)岐阜大学生命科学総合研究支援センター嫌気性菌研究分野
4)獨協医科大学感染制御・臨床検査医学講座
5)獨協医科大学病院感染制御センター
6)東京女子医科大学感染症科
7)愛知学院大学薬学部微生物学講座 |
発行 |
臨床微生物:26(3),223─233,2016 |
受付 |
平成28年1月15日 |
受理 |
平成28年4月22日 |
要旨 |
Nutritionally variant streptococci(NVS)は感染性心内膜炎の起炎菌として重要であるが,発育が遅く同定に苦慮すると言われている。そこで今回,少ない菌量で迅速に同定可能なMatrix-assisted laser desorption/ionization time of flight mass spectrometry(MALDI-TOF MS)を原理とするバイテックMS(シスメックス・ビオメリュー社)とMALDIバイオタイパー(Bruker社)および従来法のバイテック2(シスメックス・ビオメリュー社)間のNVSの同定精度を比較した。さらにNVSの同定に重要とされる生化学的性状についても検討を行った。対象のNVSはtype strain 3株と16S rRNA遺伝子で既同定の臨床分離株3株と健常人口腔内分離株20株の計26株を用いた。その結果,16S rRNA遺伝子とは菌種レベルでバイテックMSは100%,MALDIバイオタイパーは84.6%,バイテック2は65.4%一致した。
NVS同定に重要な生化学的性状の検討の結果,MALDI-TOF MSで同定された場合はその妥当性の評価として,チョコレート寒天培地や嫌気性菌用寒天培地と比較した羊血液寒天培地上で非発育あるいは遅発育といった挙動,コロニーのグラム染色所見がグラム不定・多形性,カタラーゼ試験が陰性,用手法のPYR陽性の確認がNVSの特徴を押えており,短時間かつ少量のコロニーで実施可能なため重要と考える。一方,MALDI-TOF MSが導入されていない施設では,同定精度が十分とは言えないバイテック2などでの同定が必要である。その場合は,上記の生化学的性状に加えて,用手法のアルギニン加水分解試験,α-galactosidase,satellitism testなども含めた同定が必要となる。
以上から,MALDI-TOF MSは従来法よりも少量の菌量でNVSを迅速かつ正確に同定可能であり,NVS感染症診療に貢献できるものと考える。 |
Keywords |
nutritionally variant streptococci, MALDIバイオタイパー, バイテックMS, Satellitism test |
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