学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

書誌情報


download PDF Full Text of PDF (777K)
Article in Japanese

論文名 グラム染色を契機にレジオネラ肺炎を疑い,複数血清群のLegionella pneumophilaを検出した1症例
論文言語 J
著者名 大野 達也1), 田中 洋輔1), 安西 桃子1), 小松 奈央1), 若竹 春明2)
所属 1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院臨床検査部
2)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急センター
発行 臨床微生物:27(1),34─40,2016
受付 平成28年8月2日
受理 平成28年10月4日
要旨  症例は基礎疾患のない79歳の女性で,自宅浴槽にて顔を水没させていたところを発見され,意識障害のため当院に救急搬送された。意識障害の原因として,インフルエンザを契機に脱力・脱水をきたし浴槽にて溺水し,低酸素脳症になったものと診断された。入院時の画像所見にて左下葉に浸潤影を認めていたが,Peramivirおよび第3世代セファロスポリン系薬の使用により症状の改善を認め第7病日に抗菌薬は中止された。しかし第9病日の夜間に呼吸状態が悪化し,右上葉に新たな浸潤影を認めたため人工呼吸器関連肺炎を疑いTazobactam/Piperacillin(TAZ/PIPC)が投与開始された。さらに第10病日に実施した気管内吸引痰のグラム染色にてLegionella属菌を疑ったため,Levofloxacin(LVFX)が追加投与された。その後簡単な受け答えが出来るまでに意識状態は改善したが,第14病日以降は酸素化不良による低酸素状態が続き,第19病日に全身状態が悪化し永眠された。 本症例では,気管内吸引痰のグラム染色にて白血球内にのみグラム陰性短桿菌を認めていたことからLegionella属菌を疑い,Legionella pneumophila sero group(LPSG)5および6を検出した。今回,グラム染色と医師との連携はLPSG1以外のレジオネラ肺炎における迅速な診断,治療につながった。
Keywords Legionella pneumophila, 浴槽水, sero group 5, sero group 6, グラム染色
Copyright © 2002 日本臨床微生物学会 All rights reserved.