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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 救命救急センターで分離されたメタロ-β-ラクタマーゼ産生Enterobacter hormaechei/Enterobacter xiangfangensis 4株の分子疫学的および患者背景の解析
論文言語 J
著者名 香川 成人1), 森 伸晃2), 青木 弘太郎3), 樋口 晶子1), 須江 萌1), 勝田 桃子1), 吉住 あゆみ3), 石井 良和3), 舘田 一博3), 青木 泰子2)
所属 1)独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床検査科
2)独立行政法人国立病院機構東京医療センター総合内科
3)東邦大学医学部微生物・感染症学講座
発行 臨床微生物:27(2),81─87,2017
受付 平成28年9月14日
受理 平成29年1月19日
要旨  2013年8月から10月までの3ヶ月間に当院の救命救急センターにおいて4名の患者からカルバペネム耐性のEnterobacter cloacae complexが7株分離され,本研究では,これらの株の細菌学的および遺伝学的特徴,患者背景の調査を行った。供試菌株は,生化学的性状および16S rDNAのシークエンス解析によってEnterobacter hormaecheiおよびEnterobactar xiangfangensisと同定されたが,これらの菌種を区別することは困難であった。Pulsed-field gel electrophoresisの泳動パターンの解析により,同一株である可能性が示唆された。すべての供試菌株はIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)を産生し,インテグロン構造中の耐性遺伝子カセットとして“intl1-blaIMP-1-aac(6')-IIc-qacEΔ1-sul1”が確認されたが,キノロン耐性決定領域に変異は認められなかった。これらの患者では,尿道カテーテルなどの医療デバイスおよびカルバペネム系薬などの広域抗菌薬の使用が共通して認められた。本菌が喀痰から分離された患者のうち1名は,培養された菌量も少なく,臨床経過から保菌状態と判断されたが,残る3名の患者においては,血流感染および肺炎の起因菌と考えられた。感染症を発症した3名の患者は,levofloxacin単剤にて治療されたが,原疾患の悪化により死亡退院した。以上のことは,IMP-1型MBL産生E. hormaechei/E. xiangfangensis株による感染症の本邦における初めての報告であり,今後の動向調査が必要であると考えられた。
Keywords メタロ-β-ラクタマーゼ, Enterobacter cloacae complex, Enterobacter hormaechei/Enterobacter xiangfangensis, 分子疫学的解析, 患者背景の解析
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