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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 ヒト,動物,環境をとりまく非結核性抗酸菌の浸淫状況と宿主適応
論文言語 J
著者名 和田 崇之1), 吉田 志緒美2,3), 柳井 徳磨4)
所属 1)長崎大学熱帯医学研究所国際保健学分野
2)長崎大学医歯薬学総合研究科国際保健学分野
3)国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター感染症研究部
4)岐阜大学応用生物学部獣医病理学教室
発行 臨床微生物:27(3),139─148,2017
受付 平成29年5月8日
受理
要旨  抗酸菌属(Mycobacterium)はヒト結核菌やらい菌をはじめ,多くの病原菌種を含む。近年,日本国内の結核罹患率は人口10万人に対して約15であり,漸減傾向にある一方で,非結核性抗酸菌(Non-Tuberculosis Mycobacteria,NTM)感染症が激増しており,新たな局面を見せている。とりわけ患者数が多いMycobacterium avium complexのほか,主に皮膚症例が多いM. marinum,大気汚染との関連が示唆されているM. kansasiiなど,多様な菌種によるヒト感染の報告例はあるものの,それらの感染源については詳しくわかっていない。元来自然環境下で生育可能な菌種でもあり,加えて飼育動物,家畜などからも分離されるため,それらを遺伝子レベルで分析・比較し,近似度からその伝播経路を推定すること(分子疫学解析)が重要な手がかりとなる。しかし,これまでヒト症例以外からの分離菌株は,種同定を含めて詳しく分析されることが少なく,その生態学的知見は極めて限局的であり,今後の調査が待たれている。  本総説では,ヒトの起病菌として認識されているいくつかの抗酸菌種について,遺伝学的位置付け,動物・環境からの分離状況や症例について,筆者らの経験を交えて紹介する。また,細菌学,生態学的観点に基づいて抗酸菌症を俯瞰し,医学領域と獣医学領域の連動とその研究展開について概説する。
Keywords 抗酸菌属, 非結核性抗酸菌(NTM), 人獣共通感染症, One Health
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