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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
プラスミド水平伝達を介し多菌種へ耐性伝播したIMP-1メタロ-β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌による院内感染事例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
安部 朋子1), 永田 由美2), 松井 真理3), 青木 知信2), 柴山 恵吾3), 関塚 剛史4), 山下 明史4), 堀内 寿志5), 山口 佳子6), 渡邉 真理1), 大隈 英子1), 黒田 誠4), 鈴木 里和3) |
所属 |
1)福岡市立こども病院検査部
2)福岡市立こども病院感染対策室
3)国立感染症研究所細菌第2部
4)国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター
5)福岡市立市民病院検査部
6)福岡市立こども病院薬剤部 |
発行 |
臨床微生物:27(3),158─167,2017 |
受付 |
平成28年9月16日 |
受理 |
平成29年3月17日 |
要旨 |
当院において,プラスミド水平伝達を介し多菌種へ伝播したメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生腸内細菌科細菌の院内感染事例を経験した。
初検出の患者Aは集中治療室(ICU)長期入院患者であり,尿検体よりイミペネムに耐性を示すMBL産生Enterobacter aerogenesが検出された。患者Aにおいては,1年4ヶ月の入院期間中,一度もMBL産生菌が検出されておらず,院内で獲得した可能性が示唆されたため,関連病棟で保菌調査と環境培養を実施した。その結果,9か月間に初検出患者を含めた計15名から5属7菌種にわたる23株のMBL産生腸内細菌科細菌(MBL-producing Enterobacteriaceae,MPE)を検出し,さらに環境培養でも注入関連器具の洗浄ブラシからMPEを検出した。これらの菌株はいずれもPCR法でIMP-1型MBL遺伝子が検出され,うち,8株(Enterobacter aerogenes,1株,Klebsiella pneumoniae,2株,Klebsiella oxytoca,1株,Serratia marcescens,2株,Escherichia coli,1株,Citrobacter freundii,1株)のプラスミド解析を実施したところほぼ同一のプラスミドを共有していた。
本事例では検出した菌株は複数菌種にわたっていたが,菌種が異なる菌株やパルスフィールド電気泳動法(PFGE)によるタイピングが一致しない菌株においても,プラスミドの全塩基配列解析により水平伝播であることが解明できた。
本事例により,薬剤耐性遺伝子がプラスミドによって媒介されるMBL産生菌の場合には複数菌種の検出でも院内伝播を疑うことが重要であり,菌種が異なることによって院内感染の探知が遅れることがないよう注意を払わなければならないことが示唆された。 |
Keywords |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌, メタロ-β-ラクタマーゼ, IMP-1, プラスミド, シークエンス解析 |
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