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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Shewanella algaeによる敗血症・膿胸症例と分離株の性状について
論文言語 J
著者名 金城 正樹1), 古謝 幸恵1), 知花 淳梨1), 新里 敬2)
所属 1)中頭病院検査科
2)中頭病院感染症・総合内科
発行 臨床微生物:27(3),183─187,2017
受付 平成29年1月10日
受理 平成29年4月21日
要旨  Shewanella属はVibrio科に属する好気性グラム陰性桿菌であり,海水,淡水,石油,ガスなどの自然界に広く分布し,ヒトに対する病原性は低いとされている。今回,血液および胸水からShewanella algaeが分離された症例を経験した。83歳男性,基礎疾患に慢性閉塞性肺疾患があった。来院数日前より労作時呼吸困難があり,受診当日より左胸部痛を伴ってきたため当院受診。胸部エックス線写真で左胸水貯留が認められ,左膿胸の診断で入院,セフトリアキソン点滴静注により軽快,退院となった。入院時の血液培養および胸水からグラム陰性桿菌が検出された。自動同定機器およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF MS)でS. algaeと同定された。分離株の生化学性状ではオキシダーゼテスト陽性,TSIによるH2S産生,42℃発育およびヒツジ血液寒天培地48時間後におけるβ溶血性は,本菌の性状と矛盾しないものであった。S. algaeにおける膿胸は稀であり,本症例は日常的に海水の暴露や生魚の喫食により発症したと考えられる。多くの自動同定機器や同定キットにおける本菌のデータベースが不十分だと言われており,生化学性状および患者背景も考慮しながら同定を慎重に行う必要がある。
Keywords Shewanella algae, 敗血症, 膿胸
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