Mycoplasma hominis(M. hominis)は泌尿生殖器から分離され女性では20~50%に常在しているが,培地での増殖能が弱いため培養同定が困難で,日常の細菌検査で遭遇することは非常に稀である.今回我々はM. hominisが原因と推察された帝王切開後子宮感染の2例を経験した.症例1は35歳の初産婦で,妊娠29週に前期破水となり,以後抗菌薬投与で管理されていたが,36週に胎児機能不全で緊急帝王切開となった.術後2日目より38℃台の発熱を認め,セフェム系抗菌薬を使用したが感染は持続し,子宮創部に膿瘍形成を認めた.術後8日目,術前・術後に提出してあった腟分泌物培養から同菌が疑われ,レボフロキサシンに変更したところ感染は改善した.症例2は27歳の初産婦で,妊娠26週から前置胎盤による子宮出血を認めていた.32週に子宮出血が増量したため緊急帝王切開となった.術後1日目より38℃台の発熱を認め,経過中子宮創部に膿瘍形成を認めた.術後2日目,術前に提出してあった腟分泌物から同菌が疑われたため,セフェム系抗菌薬からクリンダマイシンに変更したところ症状は改善した.今回の経験から,通常の抗菌薬使用下でも稀にM. hominisによる術後感染症が起こり得るため,本菌に対して適切な抗菌薬を選択するためには本菌に対する知識を有するとともに細菌検査部門と密に連携をとることが重要と考えられた.
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-7
麹町パークサイドビル402
(株)MAコンベンションコンサルティング内
E-mail:kantorengo@jsog-k.jp