経腟分娩後の胎盤遺残に対し,産褥期大量出血,感染を来たしたものの,保存的治療を行い子宮温存が可能であった2症例を報告する.【症例1】31歳1経妊0経産.妊娠38週吸引分娩後,胎盤剥離徴候を認めず胎盤用手剥離を試みるも,半分程度の胎盤が遺残した.子宮収縮剤及び抗菌薬を投与したが,胎盤剥離徴候を認めなかった.子宮温存及び非観血的処置の希望があったため,産褥6,15日目にメトトレキサート(methotrexate:MTX)(50 mg/m2)を筋注した.産褥26日目に胎盤自然娩出した.経過中,赤血球濃厚液18単位を輸血.【症例2】34歳0経妊0経産.妊娠39週吸引分娩後,胎盤剥離徴候を認めず,全胎盤が遺残した.出血性ショックのため輸血を行い,子宮収縮剤及び抗菌薬投与で経過みるも胎盤剥離徴候を認めず,産褥3日目のMRIで癒着胎盤が疑われた.子宮温存希望のため,産褥4日目にMTX(50 mg/m2)筋注した.その後感染徴候が悪化し早期の娩出が必要と判断,産褥11日目子宮動脈塞栓術(UAE)施行.産褥13日目に全身麻酔下の胎盤用手剥離を施行.その後,産褥24日目に退院.経過中,赤血球濃厚液12単位を輸血.今回の症例のように,臨床的に癒着胎盤と考えられた胎盤遺残に対しMTX療法を選択した場合,大量出血や感染等の合併症に対する慎重な管理が重要であると考えられた.
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