近年,卵巣漿液性腺癌に,組織発生や臨床像の異なる2群の独立した腫瘍群,すなわちlow-grade serous carcinoma(LGSC)およびhigh-grade serous carcinoma(HGSC)が存在することが判ってきた.この診断は,MD Anderson Cancer Centerのグループにより提唱された漿液性腺癌の分化度の2段階分類法等に基づいている.我々は最近,この方法によりLGSCと診断された3症例を経験したので,その病理組織所見を中心に臨床経過と共に報告する.
症例はそれぞれ64歳,55歳,31歳の女性で,臨床進行期はIIIc, IIc, IIIc期であり,摘出物病理組織診断によりいずれもLGSCと診断された.3例中全例に境界悪性腫瘍の共存を認め,p53変異陰性,エストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプター陽性,3例中2例に術前化学療法を施行したが奏効せず,等のLGSCにみられる特徴を有していた.
LGSCは比較的緩徐な経過をたどるが,進行例が多くその長期予後は決してよいとは言えない.欧米でのLGSCに対する注目度は高く,新たな治療の試みも始まっているが,我が国は卵巣癌取り扱い規約上に組織分類として表記されておらず,認知度が低いのが現状である.今後は近い将来,わが国でも取り扱い規約の改訂に対する検討が行われることが期待される.
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