【はじめに】抗凝固薬ヘパリンにより血栓塞栓症を引き起こすことがある.その病態は主に抗PF4-ヘパリン複合体抗体が関与しているといわれ,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)として解明されつつある.子宮体癌術後にHITを発症し,出血性脳梗塞により死亡した1例を経験したので報告する.【症例】59歳女性,既往歴:高血圧症,高脂血症,2型糖尿病.子宮体癌の診断のもと拡大子宮全摘出術+両側付属器摘出+骨盤内リンパ節郭清術を施行.endometrioid adenocarcinoma Grade 1, pT2N0M0, FIGO分類II期と診断され,化学療法の予定であった.術後4日目よりエノキサパリンナトリウムを3日間投与.術後10日目に左上下肢のしびれ,左口角下垂が出現.頭部画像検査で出血性梗塞と血栓症が認められ,血小板数は2.4×104個/μlと低下,HIT抗体強陽性であり,HITと診断した.アルガトロバンの投与を開始したが,脳ヘルニアの進行により発症5日目に死亡した.【考察】抗凝固薬ヘパリンは手術症例や血栓塞栓症の治療薬,予防を目的として日常的に投与される薬剤である.HITのうち特に重篤化するType IIの頻度はヘパリン投与患者の2~3%で女性に多く,BMI高値,糖尿病既往,悪性腫瘍術後などがリスク因子とされており,ヘパリン投与の際には血小板値の推移に注意し,早期の対応が重要であるといえる.
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