妊娠経過中異常は指摘されず,満期で仮死なく出生したにもかかわらず,出生後15分で急変し,生後約1時間で死亡,剖検によって動脈管閉鎖,卵円孔閉鎖を伴う完全大血管転位症1型と診断された1例を経験した.完全大血管転位症の10~15%は動脈管閉鎖,卵円孔閉鎖を伴うと推測されている.神奈川県において年間1~2例は同様な症例が存在すると推測される.予測できない急激な経過をたどって死亡にいたった新生児症例の場合,動脈管閉鎖,卵円孔閉鎖を伴う完全大血管転位症1型の可能性を考えて,剖検で確認する必要があると考える.また,胎児診断により良好な状態で手術を行うことが予後改善に結びつくと報告されている.完全大血管転位症の胎児診断は他の疾患と比較すると技術的に難しいとされている.しかし,神奈川県においては胎児スクリーニングの普及により胎児診断される症例は増加する傾向にある.今回報告したような症例を未然に防ぐためには,さらなる胎児スクリーニングの普及が望まれる.
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