(目的)多くの施設で妊婦健診時にNon stress test(以下NST)が施行されているが,低リスク妊婦に対する分娩前のNSTの有用性についてはエビデンスが乏しい.今回我々は低リスク妊婦を対象に,妊婦健診時に施行したNSTで異常を認めた症例の分娩転帰について調査し,その有用性について検討した.
(方法)2000年4月1日から2014年5月31日に当センターで36週以降に分娩した低リスク妊婦を対象として,妊娠36週の妊婦健診でルーチンに施行したNSTの異常を理由に入院管理を行った症例の妊娠分娩転帰について調査した.陣痛発来,破水感,出血などを理由に受診した際に行ったNSTは今回の対象から除外した.
(成績)低リスク妊婦で36週以降に分娩となった症例8,264例のうちNST異常群に分類された症例は6例(0.07%)であった.外来でのNST異常を理由に急速遂娩を要した症例は無かった.分娩様式については,4例で正常経腟分娩が可能であった.2例は既往帝切後妊娠のため選択帝切となった.分娩時にNRFSを認めた症例は無かった.臍帯動脈血のpHが7.1未満の症例は無かった.アプガースコア5分値が7未満の症例は無かった.出生後NICUへ入院した症例は無かった.
(結論)低リスク妊婦に対して36週の妊婦検診でルーチンに施行したNSTで異常を認めた6例の分娩転帰は良好であった.本研究からも低リスク妊婦に対して妊婦健診で行うNSTを推奨する根拠は得られなかった.ただし,分娩時のCTGのコントロールとしての役割や,リスクを除外出来ていない場合や何らかの症状がある場合は有用である可能性はあり,さらなる検討が望まれる.
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