癌性腹膜炎による難治性腹水の治療として患者への負担が少なく,処置の効果が比較的高い方法として腹水濾過濃縮再静注法(Cell-Free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:以下CART)がある.当院では,血液浄化装置を用いる内濾過方式のポンプ式と松崎圭佑らが考案した通常の輸液ポンプを用いる外濾過方式のKM-CARTを行っている.2010年10月より2種類のCARTを行い,各方法の特徴,濾過濃縮前後における症状や状態の変化,有害事象などを比較し,検討を行った.15症例計17回,その内訳はKM-CARTが13回,ポンプ式が4回であった.腹水は概ね1/5程度に濃縮され,血圧を含めた全身状態,血液検査に大きな変動を認めなかった.KM-CARTは13.3~46.7 ml/min(平均32.3 ml/min)と濃縮速度にばらつきがみられ,そのため蛋白回収率が低下したが,発熱の頻度は13例中3例と低かった.一方,ポンプ式は器械制御のため,32.8~55 ml/min(平均41 ml/min)と一定で,蛋白回収率が高かったが,発熱の頻度は4例中3例と高かった.患者の症状やADLの改善には,両者に差は認めなかった.両者の特徴を理解した上で,CARTを行うまでの猶予時間があればポンプ式で,症状が強く猶予があまりない場合や血性腹水など蛋白成分が多い腹水の場合は人員の確保を行い,KM-CARTで濾過濃縮するように使い分けていきたい.
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