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第52巻 第4号

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原著
悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫に対する術後補助療法と予後の検討
佐々木 怜子, 小貫 麻美子, 松本 光司, 櫻井 学, 越智 寛幸, 水口 剛雄, 佐藤 豊実, 沖 明典, 吉川 裕之
筑波大学医学医療系産科婦人科学
関東連合産科婦人科学会誌, 52(4):527-532, 2015

 卵巣胚細胞腫瘍のなかで成熟嚢胞性奇形腫は大多数を占めるが,そのうち発生する悪性転化は0.17~2%ときわめて少ない.一方でその予後は特に進行例で不良であり,難治性かつ稀な疾患であることから高いエビデンスに基づいた治療法は未だに確立していない.
 我々は,成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化例(malignant transformation of mature cystic teratoma, MT)のうち扁平上皮癌への悪性転化例が多いことに着目し,I・II期に対しては同時併用化学放射線療法(concurrent chemoradiation,以下CCRT)を行い,III・IV期に対してはパクリタキセル,シスプラチンおよび5-FUからなる化学療法(PCF療法)を行い,その有効性について検討した.
 CCRTを行ったのは3名(中央値61(43~65)歳,I期2名II期1名)で,無病生存は2名で,そのうち1名(Ic期)は25.0か月,もう1名(IIb期)は69.6か月と長期生存が得られている.PCF療法を施行したのは4名(中央値48(37~57)歳,III期3名IV期1名)で,そのうち2名は無病生存で1名(IIIb期)は41.1か月,もう1名(IIIc期)は80.0か月と長期生存が得られている.
 MTに対するCCRTおよびPCF療法はまだ症例数が少なく,有効性を証明するに至らない.しかし,いずれの方法でも少数ながら長期生存例が認められること,かつ重篤な有害事象がないことから治療の選択肢の一つとして期待できる.

Key words:Ovarian Neoplasms, teratoma, squamous cell carcinoma, Adjuvant chemotherapy, Adjuvant radiotherapy
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