重症筋無力症(Myasthenia gravis:MG)は,抗アセチルコリン受容体抗体(抗AchR抗体)が神経筋接合部へ作用し,神経・筋伝達を阻害する自己免疫疾患である.今回我々は,妊娠・分娩・産褥期に増悪し,筋無力症クリーゼを呈したMG合併妊娠を経験したので報告する.症例は42歳,2経妊1経産.37歳での自然流産後にMGを発症したが,40歳で症状改善した.42歳で自然妊娠となり,妊娠17週で眼瞼下垂が出現した.妊娠28週で筋無力症クリーゼを発症し,入院後に免疫グロブリン(Intravenous immunoglobulin)療法が再開されたが軽快し,妊娠33週で退院となった.妊娠37週で再度,筋無力症クリーゼを発症し,入院後に免疫グロブリンが再開された.妊娠38週に自然陣痛発来した.分娩第2期に呼吸困難が出現したために筋無力症クリーゼなどを疑い,吸引分娩を施行した.2,544 g, Apgar score 1分8点,5分9点の児を娩出した.臍帯血で抗AchR抗体陽性であったが,新生児MG症状は認めなかった.産褥27日目に退院し,現在,神経内科で経過観察中である.
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